STOP MAKING SENSE

何かにつけていろんなことに気が付いてしまう私は、何かにつけていろんなことを考えてきた。

「これがああなるとこうだから、逆にこうならあれがああなって」と、シミュレーションをよくする。

結果、逡巡ののち一歩踏み出すはずの足は鉛のように重く、心理的にも身体的にもノロマな人間になってしまった。

そんなんだからよく、「考えすぎなんだよ」とか、「考える必要ある?」とか言われてきたし、酷い時には「無駄だよ」と言われてきた。

そういう人たちのことを、私はほとんどはっきり憎んでいる。



なんてもったいない!


何かにつけていろんなことに気が付いて、いろんなことを考える私だからこそ見つけてしまった楽しみが、割とある。
割と、だ。



胸に大きく膨らみを持つ友人に、「胸が大きいね」と言ったら「成長が止まらないの」と返ってきたことがあり、
成長が止まらない胸ってのがなんだか面白くって、いろんなことを考えてしまう私は、夜中徹底的に考え抜いた。友人の胸の膨らみについて。


「彼女の胸へ流れゆく流動性脂肪は、一体全体どこから来たのか?」
そうやって考えるうち、「地球を覆うプレートは、一体どこで生まれたというのか?」と不思議に思った。

友人の肉体を地球と結びつけた思考回路は我ながらハイセンスであるが、そんなことは今はどうだっていい。

調べると、地球を覆うプレート(海洋プレート)は海嶺で生まれたらしい。

じゃあ、耳に覚えのあった海溝ってやつは一体何なんだと思い調べると、単なる溝であった。こいつは何も生まない。


関連するものとして、マリアナ海溝ってやつが出てきたので詳しく見てみると、どうやら日本とオーストラリアの間に位置する、地球で1番深い海溝らしい。


すると今度は、英語で表記されたMariana Trench ってのが気になってしまって、そのトレンチはトレンチコートのそれと同じなのか気になった。


調べると、どちらも溝を意味するらしく、トレンチコートの名は第一次世界大戦時、塹壕戦での耐候性を発揮したことに由来する、
Wikipediaに書いてあった。
ちなみにイギリス軍発。

塹壕(ざんごう)ってのは戦争中に敵の狙撃から身を守るために陣地の周りに掘る溝らしい。
これもWikipediaに書いてあった。


なるほど、今書いていて思ったが、トレンチコートを身に纏い顔面を真っ白にして虚空を見つめる就活生は、人生の深い深い溝に叩き落とされた軍人なんだなあ。



全く、この「考えすぎ」の、一体どこが無駄と言うのか!
こんなにも面白いというのに!
もったいない!



ま、とりあえず気を取り直して、友人の流動性脂肪はきっと、両脇くらいから流れてきたのだろうと結論付け、
胸の大きな膨らみの、ちょうど間の深い深い谷間には、「マリアナ海溝」と名付けることにした。

目の色変えて

私史上稀に見る速さでカツカツと画面をタップしモヤモヤを文字におこしているのは他でもない、
たった今食べている、めちゃくちゃ不味いウインナーのせいだ。



料理が出来ない。

三時間かけて回鍋肉を作ったり、2時間かけて作ったカレーに肉を入れ忘れたり。



今「不器用なんだね笑」と思ったやつはワンピースを23巻から読み始めたのと同じくらい理解度が低い。

はっきり言うが、手先は器用。
結ばれた輪ゴムを解くのが誰よりも上手いし、1ミリも隙間を作らずシールを貼る雑用は私しか完璧にこなせなかったし、牛乳寒天が固まる前の気泡をつぶすのはいつも私。



では何故料理が出来ないのか。
それはかなりの完璧主義が原因。
レシピに表記された曖昧な数値に頭を悩まされること山の如し。



例のめちゃくちゃ不味いウインナーは、普通に焼いた。
なんなら説明なんて読まずに焼いた。

心配無用!

中学時代、英語の授業で「切り込みをいれないとウインナーが爆発して大パニック」って歌わされたことがあったから、切り込みを入れるのは断じて忘れていない。
しっかり切り込みを入れ、フライパンで焼いた。

だけどもあまりに不味い。
ので、不安になってパッケージ裏の説明書きを読んだ。


「召し上がり方
【おすすめ】焼く場合:フライパン等で油をひかずにきつね色になるまで焼いてください。」



はて……
きつね色……とは…?

申し訳ないが私はきつねなんて見たことない。

「きつねってのはただの比喩だから、きつねを見たことが無くても大丈夫!」

そんな声が聞こえてくる。

では百歩譲って焼き色がきつね色でいいとしても、きつね色にすべきなのは表面なのか?
一部分でいいのか…?それとも全体なのか…?
表面ではなく切り込みから覗く肉の部分という説も捨てきれない。結局中が温まってないと食われへんし。


これでわかったろう。
こういう曖昧な表記が全く理解出来ない。




最近ヘアカラー界隈で「ミルクティー、茶葉おおめ」というオーダーがあるらしいが、茶葉が多いも少ないも、どこのミルクティーが世界基準なのか教えてほしい。
販売元で色違うやん。

リプトン、午後の紅茶紅茶花伝
さぁ選べ。

※ゴンチャとか言うの無しなんで



数年前Twitterか何かで「まつざきしげる」色が爆誕したと目にしたけど、私の人生におけるここ数年、色に対しての感覚が私自身と世界でかなり違うようだと実感する。

松崎茂の色って一体何なんだよ…


色ってのは明度、彩度、色相で推し量るもんだと私は思っていたんですけどね。
もしくはカラーコード。これがいい。はっきりしてる。




「一般常識的にきつね色が何色か知っておくべき」と抜かすやつは、「最近どう?」と曖昧な探りを入れられた時の、何を聞かれてるかよくわからない気持ち悪さをきっと味わったことがないんだろう。幸せそうで何より。



Q.そもそも5mlを「小さじ」と決めた輩は一体誰なんだ?

A.香川綾



Q.見知らぬ誰かが知らない間に決めたルールを1度も疑わず則って生活出来る人って一体何色なんだろうね。

A.肌色


肌色が何色か説明出来る人いたらどうぞこちらまで。

ありがた迷惑

ヒョウモントカゲモドキが好きな人は多肉植物が好きなんじゃないかと思って、いくつかぷにぷにの画像を送ったら「気持ち悪い」と言われてしまった。
そういうことってある。


今朝は目を覚したくなかった。
夢の中で、中学時代好きだった人が仲直りの印に80sっぽいレコードをくれたから。

好きだった人に好意がバレて一生分の悪口を浴びせられた赤黒い中学時代。核の彼は、こうしてよく私の夢に出てくる。


不思議なことに、私は彼を恨んじゃいない。

けれども夢の中で彼はいつも申し訳なさそうで、ジェットコースターの1番奥の席を譲ってくれるし、多分2、3回くらい狙撃手から守ってくれた。



現実の彼は今何をしているんだろうと気になって、インスタグラムで検索したら一発で見つけてしまった。
本名にしちゃダメだよ、私が見つけちゃうよ。



中学時代あまり頭が良い方では無かった彼は今、「海外で働くことが中学時代からの夢」と、韓国語と英語と日本語でキャプションを書く。海の綺麗な島に4ヶ月留学していたらしい。

challenger とタグ付けされた投稿は、「今はやりたいことやれる時代。踏み出せない人に勇気を与えたい。」とのこと。


立派。その通りだよ。踏み出す勇気がないやつは今すぐに踏み出せ。


私はぶちぶちに千切れた洗顔泡立てネットを買いに百円ショップへ行くことすらままならないが、やりたいことがあるやつは今すぐに勇気を出して踏み出せ。

まぁ、私は、2ヶ月前に使用期限が切れた電動歯ブラシのヘッドを買いに家電量販店へ行くのも億劫だけれど、やりたいことがあるってやつは今すぐ踏み出す勇気を持ってくれ。

大丈夫、君なら出来る。



相変わらず顔がこの世で1番タイプな彼に、不本意ながら背中を押されてしまった私はどこへどう踏み出せばいいのやら。教えて欲しい。


ぼやきでうっかり世界救えたりしないかな。救いたいな、世界。
ありがた迷惑だけは、いつの時代も得意なもんで。

10年選手

最近、自分がまた一段と敏感になったのがわかる。

恐らく世間的には"友達"と呼ばれる関係の、他の価値観を見下すことで人生をスリリングにしていた女が2人居たけど、最近スワイプして消した。

そんでもって私より先輩で私より年上の社員は、私より仕事できない割に私にだけ当たり強くて、私はこれに構う面倒くささで仕事を辞めた。



今のたった何文字かでは、「全然いいよ、話したいだけの時あるよね」って同情されるが関の山だけど、そういう人って私がもし人殺しても「そんなことするようには思えない」って言いそう。
ぼーっとしとんなよ。


田中みな実は1日に3リットル水を飲むらしいけど、2リットルも飲めない私でさえ1時間に1回トイレに行って用を足さないといけないから、一体どれだけ田中みな実はトイレに行くんだろうと考えた。逆に膀胱が一般人の2倍あるのかな。

あっそんなに本気で田中みな実の排泄事情は気にしていなくて、そうして地球の自転を受け流してるだけだからほっといて欲しい。



というのも、今日は2020年の5月1日。
今からおよそ1ヶ月前、2020年4月いっぱいで職を失うと決まった。

すぐさまボールペンを走らせて書いたのは遺書だった。その日が来たら、人生も退職できるかと思った。

別に普通に、暗い感じじゃなくて、「お疲れ様でした」って、タイムカードおして、靴履き替えて、リュック乗っけてチャリ漕いでたら黄泉の国に行けるとその時本気で思った。

とはいえ、黄泉の国はチャリ通原則禁止だし、一銭も交通費支給されないって私知ってたから、アイデンティティだった明るい髪を漆黒に染めた。

街で黒猫を見た時、その黒さを切り絵の切り取られた方の様だと感じたことがあるけれど、髪を染めるだけで新しく生まれ変われると信じた偽物の黒髪の私は、実際なんにも新しくはなっていないし、さしづめ切り絵の象られた方ってとこかな。

象られた私は一体何をかたどったんだか。知りたいね。

積雪

壊れかけの空調、鳴り止まない着信、給湯室の水道、軋むキーボード、遠い話し声、擦れる衣服。

挙げればキリの無い雑音の中で、私は声を聞き取れない。
それにどれほど悩んでも、それでどれほど怒られても、日常生活でしか浮き彫りにならない実態を、聴覚検査は感知しない。


私たちは、自分にとっての"普通"を押し付け合って生きているから、これまで「気のせい」と言われてきた。医者に行っても「異常なし」。


高校時代、教師を目指すと夢を語った昔の友人は、自律神経失調症を患うクラスメイトを笑った。
彼女らは今、何をしているだろうか。
病気は治っただろうか。今も人を笑うだろうか。

隣のテレビ、2階の足音、灯油ストーブ、外の車、母の咳払い。

私には、笑われた彼女がその時笑い返したのか、笑い返さなかったのか、もう二度と確かめられない。

日常

気怠さにもたれた日曜の仕事終わり、好きな人と電話するひとときは癒しだ。

「小学生にもわかる微分積分」と、かなり大口を叩いたページへ指を進めただけでは"人はなぜ微分積分したくなったのか"、それがどうしても理解出来ずに、頭のいい彼に解説を仰ぐ。


好きな人は、とても頭がいい。
彼の出身大学を知って恐れ慄くばかりでなく、これまで積んできた徳と乱数調整の成果に妙な達成感が湧いたほど、この出会いに感謝した。それほどに頭がいい。

最初は理解するつもりだった微分積分の解説も、その温度を増すごとに、単なる愛着へ変わってゆく。

サピオセクシャルの恋はエントロピーが高い。
そうとしか言いようのない日常が、今日も私を襲う。

唇よ、熱く君を語れ

職場で使うには余りにも独特な香りのハンドクリームを、やっとこさ使い切ってしまった。オアシスを無くした私の手は、油分、水分を捕まえられず、砂漠地帯と化す。

出先で見つけたLUSHに光を見出し、駆け込む。
野生の草花の香りがするクリームを購入した。



話は変わるが、唇のターンオーバーが過剰な友人に「皮が剥けないリップがないか」と尋ねられ、かねてより気に入っているリキッドルージュをおすすめした。

その際、色見本の画像を送りたかったのでホームページを見に行ったところ、私が使っていたPK400番のカラーに、「Why not?"だめなの?"」と意味が込められていたことを知る。

好きな人とデートした時、私はこのリップを付けていた。好きな人は私のことを好きじゃない。

次に買うならこの色と思ったOR241番は、「That's it?"それだけ?"」のキャプション。
流行りの歌より心にくる。



荒れた心に荒んだ手。
そんな時は、本日購入した、「DIVINE LIGHT」と名の付いたハンドクリームを塗るほかない。
「DIVINE LIGHT」の和訳を調べたら「神聖なる光」だった。

荒れた心は曇った空。一筋の光は眩い光。
鳴り止まないファンファーレの中で、大天使ミカエルが私に出した課題、それは、心の微分積分だった。