揺れる水面に反射したい

ロープを腰に巻きつけないと、深い蒼に溺れてしまうから、海女はそれを忘れない。
私もロープをこさえなければそう。もう4度目になるであろう美人を羨む夜に、立ち向かう方法をまだ知らない。

整形を憎む天然美人に私の苦しみは一生わからない。わかってしまったら2度と向こう側へ行くことなどないのだから。
かくいう私も整形を憎んでいる。他人の整形に興味などない。けれど自分が、そう思うと憎い。


産まれて、生きた。それだけだった。
私も自然に美しくありたかった。
産まれて、生きた。
それだけで美しくありたかった。

私の美しさが、お茶を濁すほどの強度を持つなら、どれほど辛くなかったろう。



袖を通した厚手の長袖に、寒さが纏わり付く。夢の中にいるような睡眠不足の海は、冬でも春でも夏でも寒い。
美しくなることばかりを考える限界に、コンクリートで花を育てる無謀さをみる。

バカバカしいが、未だに受け入れられないでいるから、一生誰からも愛されることなく1人で生きることを選べない。
1人で生きられたら良かった。弱くて仕方ない。



私がピンクを選び取った時、ピンクはピンクで無くなった。
周囲の顔色を伺い、私以上に似合う人が居たら譲るべき色で、
私以上に似合う人が選ばなかったピンクなど、もはやピンクではないことを、すっかり、うっかり忘れていた。
本当は、本当のピンクが欲しい。


仕方ない。人々は美しいものを好む。
私も。
けれど美しいものを好むと同じだけ憎み、羨む。
羨望の眼差しで彼らを敬うのには飽きた。自分にも。



眠れない夜を乗り越える材料をギラつく昼の間に集めておかないと息が出来なくなるけれど、昼はあまりに眩しくて煩い。
けれど、酷い焦燥と諦めの感情に覆われた夜は本当に怖いから、まだ寒い朝シャワーを浴びた後、袖を通したのはパジャマでは無かった。

ロープを買おう。
たとえそれを引く者が現れずとも、1人でちゃんと帰れるように。