幼い頃は嘘をつかない

現在、2020年1月25日、時刻は午前3時を回った頃。
好きな人に会いに行くのが楽しみで眠れないでいた。

今日に至るまでの私の準備は完璧だった。
「かわいい」と思ってもらえるようコンサバな洋服一式を買い揃え、いつもより念入りにハンドクリームを塗り、大して伸びていない爪を切って磨いてピカピカにした。


女性らしくすることがずっと怖かった。今も怖い。
あまりの恐怖に1000字を超える超大作を書いてしまった。

私の記録として公開することにする。



「汝が良妻を持たば幸福者にならん。悪妻を持たば哲学者にならん」

名言として現在も世に残っているこの言葉だが、これを遺したソクラテスは哲学者である。
こんなに賢い愚痴は初めて聞いた。



世界一可愛いニホンザルのカイくんは、アニマルトレーナーのクロダさんと絶対に目を合わせない。

ニホンザルの習性で、目を合わせたら「喧嘩の合図」になるかららしい。
「歯を見せる」行為も威嚇する行為なので軽率にしないほうがいいと聞いたことまである。

私は、話している相手の目を見るのが酷く苦手で、笑顔を強要される卒業アルバムの撮影も苦痛だったので、そういった特性に指を差し、脅し、嘲笑してくるような輩には、ニホンザルの習性に理解とご協力頂けるようお願い申し上げている。

同じ境遇におかれるすべての彼らのためなら、ソクラテスになってもいい。



しかしながら、

「赤ちゃんが可愛いのは、可愛くないと愛してもらえないからだ」

この話を聞いてものすごい衝撃が走り、やけに合点がいったことをよく覚えている。


たしかに赤ん坊ってやつは、講談師ほどモノを言わないし、冨永愛さんのようにランウェイを歩くことも出来ない。

なるほど、私は自分のことをニホンザルだなんて思っている場合ではなかったのだな。
私は赤ん坊だった。

人の目をみて会話をし、どんな時も笑って過ごし、可愛らしくすることを受け入れた人間の方が、人から愛されるだろう。



生理をタブー視するのは何故なのか宗教学という面で紐解くと、「女性が人を産む」ことを脅威に思った男性らが背景に存在していた。

人を産むというのは人を産んだ"神に近い行為"だと認識し、それが女性に対する脅威に変わったことが、今の今まで生理がタブー視されてきた所以らしい。



私はフェミニストではないが、一部の男性による「女性に対する美の強要」と一部の女性による「男社会を生き抜く力」に時たま反吐が出そうになる。


私の性自認が男性だったにしろ目をみて会話をし、笑わないよりは笑った方がいいという世間の共通の認識は覆らないものの、
こんなにも人生で同じ壁にぶち当たるのは、そしてその理由がこんなにもしょうもないのは、

女はただ美しくなければならなくて、美しくなることで生きやすくなり、
それでも私はニホンザルで、ソクラテスで、赤ん坊のように可愛さで愛されようとする彼女らに時たま反吐が出そうで、
そんなのまるで、女性の出産を恐れた大昔の男性のようだ。最悪。



ハッと我に帰り、布団の中で抱きしめたぬいぐるみを見る。
4歳の頃からぬいぐるみが好きで、それぞれに名前と性格を細かく設定してあって、世話焼きで怒りっぽい子もいるし、いつも眠たい忘れんぼうさんも、ピンクの苺の可愛い服を着た男の子だっている。

私の相棒のごまちゃんは、言葉を話せない。ぬいぐるみだからではなく、「言葉を話せない」設定だ。
その上薄暗いジメジメした狭いところが好き。

でもごまちゃんは最高にイカしてて、みんなはみんなのまま愛されて、私は本当はこうなりたかったんだ、この世界を夢見ていたんだって、もう4時を回った今頃気付く。22歳でやっと気付いた。


私は人を愛したい。世界も愛したい。宇宙をまるごと愛して、最後にはごまちゃんのように微笑みたい。