持ち込み先は墓場まで

ふと気になったのだが、みんなは自分の”すべらない話”を持っているだろうか。

暇で暇で仕方がないとき、連れに「なんか面白い話して。」なんて言われるのは私だけではないだろう。その時決まってする話がそれだ。

 

知り合いにはもれなく全員に聞かせたお気に入りの話がある。毎日ブログを更新して欲しいとの嬉しいお声を頂戴した今日この頃、当然のようにネタがないので今日はそんな”すべらない話”を聞いていただきたい。

 

それではお聞きください。

 

オレオレ詐欺

 

 

それはテレビで”オレオレ詐欺”というワードを耳にするようになった、数年前の出来事だった。

その日は確か土曜日で、父も母も仕事、当時高校生だった姉は部活、小学生の弟は友達と遊びに近所の公園へ。家にいたのは、私ひとりだった。

そんな時電話がかかってきた。

 

「あ、もしもし。オレだけど。オレ。」

 

それは噂に聞いていた、オレオレ詐欺だった。私は即座に電話を切って、一時停止した録画番組の再生ボタンを押した。

 

 

しばらくすると、また電話がかかってきた。鬱陶しいと思いながらも電話に出る私。

 

「さっきなんで切ったんだよ。オレだよ、オレ。」

 

もう一度かけてくるなんて、「あ、この人間違えてる」と思った。でも、何も言わずにそっと電話を切って、2度と電話が鳴らないように受話器を外しておいた。 

 

もう大丈夫だろうと思ったその時、どこからともなく電話の音が…

想像してみて欲しい。こんなのホラー映画より怖い。時間軸の歪みか、パラレルワールドとでも交じり合っているんじゃないかと…

 

鳴っていたのは、隣の部屋の子機だった。

追い込まれた時の人間ってすごくて、その時ふっと思い出したのである。弟はまだ声変わりしていないけど、先日家の前でだべっていた弟の友達に早くも声変わりしている少年がいたこと。

 

 

もしかして:勘違い

 

 

 

「はい、オクムラです」

「●●君の友達の青木ですけど、●●君いますか。」

 

私を弟と勘違いしているのであれば、今度こそ勘違いされないようにせねば。その思いが先行するあまり、ついつい”さっきまで怒っていたのに電話がかかってくると突然優しい声を出す母親”のような声を出してしまう私。そしてちゃんと私だとわかってくれる青木君。

 

 

あの後弟は青木君に「なんであの時電話切ったんだよ」と身に覚えのないことを言われてとても不思議だったみたいだけど、5年以上たった今でも「それ私です。」と言えていない。 

 

弟の結婚式に招待されたら、その時打ち明けることにしよう。それが無理なら持っていく先はただ一つ。

 

 

持ち込み先は墓場まで。