見えない物とは戦えない

映画を観た。「メゾンドヒミコ」。

それは、"ヒミコ"がゲイバーのママを引退した後に始めた、ゲイの為の老人ホームでの出来事。

「本当はドレスが好き」ってことが誰にもいえなかったゲイのヤマザキさんが、真っ白のドレスを着てディスコへ行き、老人ホームのみんなで楽しく踊るシーンで泣いた。

ずっと夢だったって言って、ディスコの紅いお手洗いの豪華な鏡でリップを塗り直すヤマザキさんは、色っぽかった。

生まれ変わったら女になりたいから、死ぬのは怖くないなんて言う笑顔は切なくて、
自分が何となく送る生活が、誰かにとっては喉から手が出るほど欲しいものだなんてわかってはいたけれど、
お化粧直しがそれだなんて、考えもしなかった。



せっかく女に生まれてきたのに、可愛らしくできないなんて"彼女達"に申し訳ない。
こういう気持ちになることがよくある。

私は女として生まれてきたけど、人から愛されることを気味悪く感じ、興味を持たれると鬱陶しく感じてしまう為、毎日ブスっとして、振り撒く愛嬌なんてない。



映画を観て、肌寒い頃に遊びに行ったオカマバーを思い出した。
私の前に腰掛けた甘そうな名前の彼女は、ミニスカートから覗くすらっとした脚をぴったりとくっつけ、お膝の上には可愛らしいハンカチーフをふわり。


こういう人に、私もなりたい。