親愛なるディストピア
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前略
古今東西 自由自在
つまらなくて思い出せない昼間と、つまって思い出せない夜間。
其のコントラストに場酔いするも又、日々是好日なり。
パブロフの犬とは上手く言ったもので、梅干しを見ると唾液が出てくるように、共に"良い思い"をした友人に遊びに誘われると、目の前にぶら下げられた"最高の思い出"という餌にヨダレを垂らしながらハァハァするしか出来ないものである。
私達は所詮ヴィーナスの犬。
とどのつまり、私はまたもや異常に軽いフットワークと甘〜いレスポンスでお馴染み、わたがしガールに堕ちてしまった。そんな一日を記録しよう。
其の日私と友人は、踊り手のライブに参戦した。
それまで踊り手自体あまり観て来なかったのだが、完全に熱に当てられてしまった。
汗を流しながら踊り狂い、たまにペロッと舌なめずりする赤色の彼は、何故に在れ程まで格好良く見えたのであろう。
昨日まで存在すらも知らなかった人が感極まって流す涙を見、ついうっかり溢れる。
「はちゃめちゃに売れて欲しい」
さてさて、まだまだ冷めやらぬ心を連れ、私たちは晩御飯を喰らいにアボカド専門店へ向かった。
アボカドとは現実世界に存在する悪魔の実である。在れの為なら発狂して虎になる李徴が居ても全く可笑しくはない。それ程には旨い。
いやしかし誠に残念ながら脳内ビデオが砂嵐で、アボカド料理が如何に最高だったかは余り思い出せない。
ただ、男の人と飲む場合はジンを、女の子と飲む場合はウォッカにしようねと護身セミナー〜飲みの席編〜を受けたことは鮮明に覚えている。
そして此の後、私は友人に連れられて人生ニ度目のホストクラブへ乗り込んだ。前に行った、金のミラーボールが大量にぶら下がっていて壁から動物の首がニョキニョキ生えている、騙し絵を抜けた先のシャングリラ。
非常に言い出しにくいのだが私の中の小学5年男児が下半身を連想し騒いでいる。
全く、静かにしなさい！めっ！
此所での事を思い返すと、もう記憶なんてどこか遠くへ行ってしまえ、と思ふ。そんで二度と帰って来んな、とも、思ふ。
今回は戒めとしてここに記録するけれども、無事に社会性が死亡するのでその辺りは勘弁して欲しい。今「お前は既に死んでいる」と思った奴は、正直に手を挙げなさい。放課後職員室に来ること。
大前提として、私は「人肌恋シンドローム」という突如として人肌が恋しくなる持病を持っており、其の日は持病の発作が爆裂していた。
そんな私に友人が担当ホスト君を貸してくれると言うので、ここぞとばかりにベタベタしまくったのである。
昼間、笑顔で挨拶するのもままならないような私が………痴態……
正気に戻ってしまった今、情けなさと己の気色悪さと各方面への申し訳なさをミキシングしたカクテルの二日酔いが永遠に続いている。かれこれ四日目。
兎にも角にも、爆発したむず痒さを無事消化しきった私と友人は、其の足でオカマバーを探しシーラカンスの街並みを練り歩いた。
そこらに立ってた兄ちゃんが指差した先のオカマバーへ向かうと、丁度キュートなオカマちゃんが出てきたところで、お店はもう閉じてしまった様。
だけれど、其のとってもキュートなオカマちゃんが知り合いがやっているという店へ案内してくれた。
無事にふざけた名前の愉快な園に辿り着いたはいいものの、此処で異邦人を歌ってからの記憶が曖昧。隣のお客さんが入れたU.S.Aをもれなく全員で踊り狂ったことしか覚えていない。
ここは恐らく、また赴く。楽しかったような気がするので。
いよいよ空が沈みしんと冷めてきた街を他所に、私達のヒールはコツコツ軽快にクラブの床を踏んだ。
私は既に睡魔とアルコールにだいぶやられていたので、兼ねてから時が満ちたらとそわそわしていた人生初のクラブは一瞬で終わった。刹那。
一人で潰れているところへクールなお姉さんが話しかけてくれたことは辛うじて記憶している。
黄金の門を潜りどれ程経ったかは知る由も無いことであるが、先程までピンピンしていた友人が突然デロデロになって私の前に現れた瞬間、一気に目が覚めた。ベロベロどころの騒ぎではない。それはもうデロデロ。
酒に強い友人が在れ程までアルコールに負けている姿を見たのは、此れが初めてだった。
あまり悪く例えるとこちらの記事を読んだ友人にど叱られる危険性があるのでオブラートに50回ぐらい包んだ言い方をすると、アルコールに完敗した友人の姿はさながら「ヌートリア」のようであった。
私とヌートリアは巣へ帰り、お互いにどれ程ダメになっていてもしっかりキッチリ風呂には入るところは、自信を持って長所と言えよう。
さてさて、
只今日常 諸行無常
つまらなくて思い出せない昼間と、つまって思い出せない夜間。
其のどちらがパロディなのか、ヴィーナスの犬に答えは無意味。
おわりに、
「前略」で始めた場合の結語でありながら、現代社会において違う意味にも捉えられる漢字二字で締め括ろう。
其れ即ち、正に
草々
